この記事ではこどものHSPである「HSC」の特徴について説明しながら、療育やカウンセリングでできることなどについて解説していきます。
HSC(こどものHSP)って何?
HSCとは、「Highly Sensitive Child」の略名で、生まれつき繊細で、感受性が高く、刺激に対して反応しやすい子供のことを意味しています。
大人の場合「HSP(Highly Sensitive Person)」といいます。
1996年にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した概念です。(著書:ひといちばい敏感な子)
アーロン博士によると、HSCのこどもは統計学的に人口のおおむね15~20%くらいであると著書で記載しています。
病名や障がい名ではないため、医師の診断などは行われません。
しかし
- ストレスを感じやすい
- 感情の扱いが難しい
- 人とのかかわりにストレスを感じやすい
などの特徴があるため、
- 生きにくい(生きづらさを感じやすい)
- 不登校(不登園)や行き渋りが多い
- 外でうまくいかないことが多い
- グループや環境になじみにくい
- 自信や自己肯定感、自尊心が低下しやすい
- 疲れやすい
- 物事に集中しにくいことがある
などを感じてしまうことがあります。
障がいや病気といった扱いではないために、自力で何らかの努力をして社会に対峙している場合が多く、社会的な支援や理解、専門的サポートも必要とされてきています。
HSCの特徴
アーロン博士によると「HSC(HSP)」では
- Depth of processing「深く処理する」
- Overstimulation「過剰に刺激を受けやすい」
- Emotional response and empathy「全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い」
- Sensitivity to subtleties「ささいな刺激を察知する」
上記の4つの特徴(DOES)があるとしています。
もう少しわかりやすく説明すると、
- 憶測や推測が多く、未来の事を考えてしまう。
- 敏感であり、過剰に強く刺激を感じやすい。
- 共感性が高く、自分の事のように感じてしまう。また感情反応が強く感じやすい。
- ちょっとした刺激を感じやすい繊細さを持つ。
といった特徴があります。
HSCのいろいろなタイプ
アーロン博士によると「HSC(HSP)」では、
①怒りの表現や癇癪(かんしゃく)が多いタイプ
②言う通りにする良い子タイプ
➂人との接点をあまり持とうとしないタイプ
➃完璧さやスターになって自らの欠点や自信を補おうとするタイプ
➄傷つきやすさから大げさに騒ぐ、芝居がかったパフォーマンスを行うタイプ
などお子さまによっていろいろな性格タイプがあることを紹介しています。
HSCといってもみんな同じ性格や愛着特性ではない、ということです。
HSCは個性である?!
HSCは病気でも障がいでもなく、一つの特性であって「個性」として活かすべきだ、という主張があります。
上記の4大特徴を個性化してみるとこのような捉え方ができるのではないでしょうか?
1.憶測や推測が多く、未来の事を考えてしまう。
⇒物事を深く掘り下げて考えられる、先まで考えて行動できる
2.敏感であり、過剰に強く刺激を感じやすい。
⇒人の痛みを理解する、他者(もの)の攻撃性や刺激性を低くするための提言・身体表現ができる
3.共感性が高く、自分の事のように感じてしまう。また感情反応が強く感じやすい。
⇒相手の気持ちがわかる、尊重できる、豊かな感情表現ができる
4.ちょっとした刺激を感じやすい繊細さを持つ。
⇒繊細なこだわりが細やかな仕事やサービスを生み出す
将来的に仕事に関わることでその特性は活かされていくかもしれません。
HSC特性の方は、カウンセラー、科学者、歴史家、弁護士、看護師、医師、教師、芸術家に向いているとされています。
しかしこのようにポジティブな側面を感じられるまでは、とてもネガティブで大変な特性として受け取ってしまうことがあります。
性格の50%は生まれつきで、残りは経験値や環境などの影響を受けるとされています。
うまく個性化するには、特性や特徴による大変さをいかに環境や心理的にうまく調節し、良い経験を積むことが重要になるかもしれません。(そのためのサポートを当教室では行っています)
HSCはこだわりが強い?!
刺激に対して敏感な感覚を持つHSCの子供たちにとって、その敏感さゆえに普通とは異なる「こだわり」を持つことがあります。
- 衣服や布団の感触に敏感で、こだわりがある
- 異なることをすると刺激が多いから、同じものを好む
- 繊細さから独特の人とのかかわり方になる
- 言葉の受け取り方が独特で、子育てが大変だった
- 触感や食べ物の舌触りなどにこだわりがある(苦手な感触が多い、強い)
- におい、温度、環境の変化に敏感
- 他者の共感が強くて日常でいろいろ反応することが多い(テレビとか)
- 気を使いすぎてしまう
- そんなことで傷つく?ということで傷ついてしまうので防御線を張ってしまう(やらない、関わらない)
- 遊び方が独特でこだわりがある(一人で遊ぶ、関わりにくそうに遊ぶ)
HSCは敏感さや繊細さを感じるため、どうしても「不満」が多くなってしまいます。(心の中で抑圧するタイプもいます)
嫌なことを避けたい、負けたくないという思いから挑戦することができなくなってしまうこともあります。
また無理が生じて、急にうまくできなくなることもあります。
不満や苦手意識が多くなりやすい分、当人も保護者の子育ても大変になることがあります。
HSCとASDやADHDそして愛着特性
発達障がいとHSCは何が違うのか?という質問があります。
医学的な解説としては、脳神経系の違いがあるといわれています。
ADHDでは左脳の血流が活発で、HSCは右脳の血流が活発であるなどのような違いがあるようです。
人の動きをまねたり、意識するミラーニューロンの働きは、ADHDやASDの人たちよりもHSCの人たちのほうがあきらかに活発であるデータもあるようです。
もう少し現実的にわかりやすい説明をいくつか例えとしてみていきます。
一人で遊んでいるという行動では、
- HSCは繊細さや傷つきやすさから防衛的に一人で遊ぶこと、うまく関われないことが多い
- ADHDでは自分の興味が変わることが多く、一緒に遊んでいても次の興味へと向かい一人で遊ぶこともある
- ASDは人への興味よりモノや遊ぶことにこだわりが強くなる傾向があるため、他者の気持ちがわかりにくいなどもあって、一人遊びが増える
- 愛着特性では関りを封じる一人遊びをするタイプとそもそも誰かに注目や愛着形成を積極的に求めてしまうタイプがある
などの違いがあります。
周囲を意識してしまう行動では、
- HSCは相手の気持ちや動向が気になる
- ADHDでは目に入った刺激が気になりきょろきょろしてしまう
- ASDはそもそもそういったことが少ない(人の気持ちに興味が少ないことが多い、自分の世界が強い)
- 愛着特性では自分に興味を引きたい行動が出やすい
などの違いがあります。
専門的家や発達に詳しい医師、そういった子供を見てこられた方はある程度の違いを理解されていると思います。
共感性に関してではADHDやASDの方は苦手なことが多く、逆にHSCの方は過剰に感じやすい違いが大きくあります。
しかしHSCは単独で起きるだけではないかな?という例もあります。
知的障がいとHSCの同時併発的な特性を持つ方もいますし、HSC特性が単体だけでなく併存して持っている方もいます。
診断名や特性名だけでその人を判断できないですし、人間を理解するにあたってそういったものだけで理解できるものではないでしょう。
しかしサポートするにあたっては、そういった理解があると役に立てられるものがたくさんあります。
HSCの子育て
繊細さや過敏さがあるためどうしても「不満」が多くなってしまいます。(逆に抑圧して無理して頑張りすぎる子もいます)
- 嫌だ
- やらない
- いかない
- 無理
- だめ
- いらない
- やめて
- 癇癪
などへの対応が増えてしまいます。
そのため「わがまま」に感じやすかったり、「気にし過ぎ」と感じやすかったりします。
もし同じくらいHSC特性がなければ理解できませんし、自分よりその特性が強ければ理解しにくいこともあります。
ですので対応が難しく、子育てのストレスも非常に強くなってしまいます。
共感的理解
「嫌なんだね~」
「やりたくないと思うんだね」
「やめてほしいんだよね」
このようにHSCの子供に対して共感的に理解していく姿勢や言葉がけが良いとされています。
理由がしゃべられるくらいの発達になれば、理由を聞いて
「だからそう思ってたんだね」
という理解が入るとまた一歩前進できるかもしれませんね。
ただいつもこのようにできないこともあるので、「できる限り」といった感覚も必要でしょう。
家の中で、家の人間関係の中でリラックスできる場所を作ってあげられるといいですね。
注意が必要な「子供による支配」
共感的理解は必要ですが、すべて子供の言う通りしていくとできることが減ったり、学ぶ機会を損失していきます。
ですのである程度親が主導権を持っておかないといけません。
しかし不満が多くなることの多いHSCでは、その主導権を子供がうまく持って行ってしまうことがあります。(不満を見せないタイプもあります)
そうなってくると不満があると自分の言う通りなる、癇癪を起すと自分の思い通りになると誤学習が起きて、いつの間にか不適切な表現が増えてしまうことがあります。
子供はまだ脳が完成されていません。
ですので短期的な視点で物事を考えていきます。
そのため自分の快不快で物事を単純に決めてしまうことも多くなります。
しっかりと説明しながらできる範囲でできることをやっていけるといいですね。
乗り越え方を分かりやすく伝える
お子様への理解を進めていき、理解してくれる存在ができたら、その特性をもっていることが理解できるように説明していきます。
ただこれが一生変わらないものだという説明ではなく、適切な方法でうまく努力していくとうまくできるようになったり、そんなに嫌じゃなくなったりできることを伝えていくといいでしょう。
その場合の課題はスモールステップで楽しいものがいいでしょう。
※このパートはこちらへお任せいただくことができます。受け取り方や感覚の調整、過敏さのとらえ方の変容なども練習していくことができます。
身体を動かし、鍛えることで変わるもの
運動の習い事やスポーツはその子供の身体面だけでなく、心理的にも効果的に働きます。
身体的に鍛えていくと、心理的なストレス耐性は強くなる相関も最近ではデータとしては知られてきています。
HSCの子供はグループ競技に苦手意識を持つ子供もいますが、グループで行うスポーツ以外にもたくさんの運動があります。
自分の子供に合ったものを見つけられるといいですね。
でも運動が嫌い。。。。ということも意外に多いものです。
そんな時は、好きな遊びで体を使うものを家族で一緒にやるといいでしょう。(ご相談いただいたらいくつかご提案します)
良い子タイプの子育て
良い子タイプといっても理由はそれぞれですが、その理由をみつけて少し良い子気質のバランスをとってあげると良いでしょう。
- お母さんを困らせたくないから
- 怒られるから
- ○○が嫌だから
- 良い子でないとだめだから
- 完璧でないと。。。
その理由を見つけたら対応ができます。
ただ良い子タイプにも良い側面もあるので、どれくらいがちょうどよいのか見ていくことも大切です。
HSCと不登校
繊細さや過敏さがあるためどうしてもストレスを感じやすくなりやすいのがHSCです。
ですのでどうしても不登校リスクは高くなることがあります。
- グループや集団行動が苦手
- クラス替えの環境変化のストレス
- 発表などのストレスや過緊張
- 周囲を意識して失敗が多くなる
- 周囲の空気に敏感(どう思われているか気にしやすい)
- 他者の感情を感じやすい(怒られているシーンなど)
- ちょっとしたことがストレスであったり、傷つきやすい
- 心理的ストレスから身体的症状がでてしまう
などからストレスを強く慢性的に感じやすくなります。
ストレスが溜まっても、うまく対処(コーピング)ができたり、回復(レジリエンス)できたりすれば、うまく乗り切ることもできます。
HSC特性だけでなく、そういったストレスマネジメントも重要になってきます。
上手にストレスマネジメントができるようになるといいですね。
HSCと大人になったらどうなる?の疑問
HSCは大人になったら治りますか?
という質問があります。
人によっては
- 穏やかになった
- だいぶ変わった
- 捉え方を変えると良いものに変換できた
- 今でも苦労しているけど昔ほどではない
- この性格で人生だいぶ苦しかった
などいろいろな見解があるようです。
最初に説明した通り、自分の性格の50%は後天的な経験や環境、使い方によって変化をもたらすことができます。
また周囲の目が気になることなどへの興味やフォーカスは年齢が上がるとともに穏やかになることが多くなります。
そういった意味で「人生の中盤から後半にかけて輝いていく人」もいるようです。
昔は敏感で、傷つきやすさがあったところから○○の仕事を選び、たくさんのお喜びの声を提供できるようになった。
などのように仕事に活かすことができるでしょう。
しかしすべてがそういったポジティブなものではなく、HSC特性によって苦しみ、人生が思うようにうまく歩めないと思う方もいるでしょう。
自分に向いている仕事や場所を見つけられるかも大事ですね。
また心理的には「この特性を受け入れてから楽になった」という方も多くいます。
大人になるまでじわじわ時間をかけてやるのも良いでしょうし、当教室などで子供時代にうまくとらえて活かすのも良いでしょう。
HSCの療育と心理カウンセリング
名古屋こどもカウンセリングとSST教室では、HSC特性に対する療育と心理カウンセリングを行っております。
療育で行うか、カウンセリングを組み合わせるのか、カウンセリング単体でいいのかは、お子さまの発達や特性によって異なります。
そのあたりは、保護者さまの情報をお聞きしながらアセスメント(見立て)を行い、決めていきます。
- HSC特性を理解して、自分の特性だと肯定的に受け入れる
- 目標の設定
- 捉え方の変容(捉え方に特性がある場合効果的)
- 責任の変容(どのように責任の所在を考えているかを変えると効果的な場合がある)
- 敏感さを少し鈍感にしていくトレーニング
- こだわりの変容
- 身体的アプローチ
- 一緒に遊びながら関りの練習を行う
- 嫌な言葉を受け流す練習
- 不快感との付き合い方を変化させる
- ストレス対処法(コーピング)や回復(レジリエンス)を強くさせる
- 自信や自己肯定感、自尊心などを回復もしくは向上
- HSC特性を生かした個性化を理解する
- 楽しみながらソーシャルスキルを学ぶ
などいろいろな方法をお子さまによってオーダーメードで考えていきます。
自分の特性が少しずつ分かってきて、扱い方が身につく。
そして刺激に対してうまく対応できる、感じられるようになっていく。
また感じたストレスもうまく処理できる、発散できる、切り替えられるようになることも大切です。
最初は個別療育で行いながら、慣れてきたら小集団に移行して、似たようなお友達と楽しみながら練習していくのも良いでしょう。
なかなか療育や学ぶ機会のないHSCに対して当教室はいろいろな方法でサポートすることができます。
お母さんや保護者のかかわり相談とサポートも行っていますよ。
ぜひこの機会にご相談ください。
名古屋こどもカウンセリングとSST教室

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参考文献:エレイン・N・アーロン博士「the highly sensitive person(ひといちばい敏感な子)」